お店に入ってカウンターに座りキクチさんの顔を見ると、ほぼ前置きも話のクッションもなしに私からすらすらーっと相談を始めた。ずっと話したかった。


私は注文するタイミングを失い、キクチさんも何も突っ込まずに話してくれるので、ほんとに人の部屋で話してるような気分だった。1時間くらい話して喉が渇き、1杯だけ頼んだお酒はしみじみ美味しく、すっきりと渇きを潤してくれて、あぁこれがお店の原型かもしれないと思った。


名前をつけられない間柄というのがある。
間柄には名前がついていても、その名前と雰囲気にギャップが出るような相手。

関係性はきっかけで、関係性はひとつの縛りで、縛りというほど不自由なものでもないその雰囲気の中で、いっしょにすいすい泳ぐのが好きだ。


キクチさんは、あらためて「覚悟」と言ってくれた。重くなく、軽すぎず。

話しながら私は自分が置かれている状況を整理した。
感じているよりずっと濃く変化しはじめていて、今の閃きを言葉や行動にしていくかが、これからを左右しているようだ。