表参道ブルース
とあるセミナーのため、青山にいく。
終わったのが20時半すぎで、ごはんをどうしようか考えた。
まぁせっかくやし、よーし表参道いくかと腹をくくり、向かう。
メインストリートを歩く。気分だけ味わって、ちょっと路地へ。
そしたらふいに全然知らない通りに出てしまい、閑静な住宅街のようなところへ迷い込んだ。
あんな心細い気持ちになったのは久しぶりだった。
ひとり旅って、なんて勇気のいることだろうと思う。
まして彼は英語さえあまり通じないところにいるのだ。
私は気楽に「いいなァ」と言っていたけど、旅のこわさを、ほんの少し実感した。
やってごらんと言われたら、今の私にはきっとできない。
まだやれない。やりたくない。
むしろ、私にとって旅ならば、この東京でまだまだ十分だと思う。
旅する余地が十分にあるもの。
大きい通りにもどり、なんとなく表参道ヒルズへ。
ちょっとのぞこうかなーと思ってレストランのほうへいくと、もうどうにもこうにもお腹がすいてしまって、「せっかくやし入っちゃえ」という気持ちになってしまった。間違いだった。
間違いだったので、食べ終わってすぐに出て行った。
後味の悪い食事だった。
お店が悪いわけじゃない。私の選択ミスだった。
お金だけきっちり飛んでいった。
少し虚しい気持ちで外にでる。
ぶらぶら。
どこかで口直ししたい。
ぶらぶら。
道路を渡る。
なんとなくさっきの店を思い出す。
どこかで気持ちをリセットしたい。
ぶらぶら。
ジェラートが売ってた。(ラッキー)
アイスではなく、ジェラート。
迷わず買う。「ピスタチオ」
もう一種類お選びください。とニッコリ (ラッキー)
「じゃあミルク&ミントで」と即答。
ジェラートってものが久しぶりだった。
ソフトクリームとはまた違った美味しさ。優雅さ。
ここはイタリアってことにしようと思った。外人も多いし。
そしたらちょうど隣が中華料理店だった。
じつはそこは、兄が関わった映画の試写会をみたあと、みんなでごはんを食べた店だった。
いろんなことが交錯する。
母は西宮で、兄はテレビに出たし、彼は旅をしていて、ここは表参道。
あの夜と今の接合点をさがす。
それは「私」と「店」しかなかった。
あとのことは全て頭のなかにしかない。
証明できない。存在さえ
少し歩くと陸橋があった。
通りを渡ると明治神宮がある。
陸橋をくだる途中で、私の目が踊るものをとらえた。
ビリージーンに乗って激しく踊る。
素晴らしい動き。
beat itを続けて。
マイケルジャクソンという人の影響力の凄さを感じずにいられなかった。
憧れって、人を動かす一番のパワーかもしれない。
拍手が起こる。「もうカンベン!」といってへとへとな感じで音楽を消す。
いいショーだった。
目の前のその人が、強烈に羨ましかった。眩しかった。
そういう夜だった。