開放
恵子の家にあったほうが生きるから、と授かったのはセンチメンタルな旅・冬の旅という写真集で、私がずっと欲しかったものだった。
御茶ノ水から総武線に乗る。三鷹までの帰り。
座れずに立ったままで、待ちきれないので赤い表紙をめくった。
吉祥寺で本を閉じた。
駅から川沿いの道を歩く。
私は、私が生きていることを知らせたいのでもなく、ドラマチックに演出したいのでもなく、どーだ!と言いたいのでもなく、ただあまりに隠してきたいろいろなこと、隠すことで大変窮屈な思いをしてきた自分に対して、今までがんばったなという気持ちになった。
お陰で何とか大人になれた。
でも、もういい。
陽子さんの写真の撮られ方が最高に好き。
羨ましい。
どう考えたって、気持ちいいと思う。
整った綺麗な顔とか、スタイルがいいとか、そういう女じゃ出来ない撮られ方。生き方。
ページの隙間に、短い髪の毛が一本
落ちないように閉じた