前提


振り返るべき過去を亡くした。振り返らなくてもよいことに気づいたからだ。過去から何かを得ようとすることは大変に賢いと思う。思っていたけれど、そんな気分ではないのだ。全然。同じ状況は二度と来ない。似たような現象が起こったとしても、似ていることと同じであることは全く別の話なのであって。いつも咄嗟咄嗟でいること。一瞬の判断を頼り切ること。一瞬 のなかに、今の人生を超えた叡智が凝縮されていると信じ抜くこと。感じきること。そしていまここに羅列した文字たちの持つ意味など無いということを分かっておくこと。分かっていてもらいたい。言葉の呪術は大変に恐ろしい。そして致命的なほど曖昧で無責任。初めから根拠を失っていてそして走り続けている。これは宗教沙汰だ。賢い顔をしている人が大変に多いということ。とても上手にお金を貯めたりなどする。そのくせ何も分かっていない。わたしも何も知らない。