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わたしといっしょにいないときを想って、その人に憧れたりするのだ。
ふたりで向かい合って話したり、おもしろいことがあって笑いあったり、
そういうのは楽しいけれど、それじゃお友だちとおんなじ。
ほんとに惹かれるのは、そのひとがひとりで歩くときに考えていること。
心の内でひとり、感じていること。
そのときの表情。
見ることが出来ない、その人の日常を想い、憧れ、焦がれる。
そういうのが、わたしの恋だろうと思う。
今までわたしが好きになったひとは、ほんとの意味ではふたりだけで、
ふたりに共通していたのは、いっしょにいても、その人がひとりでいるときの顔を見せることだった。
いっしょに歩いているときなどに、それまでずっとひとりで考えてきたことを、静かに洩らすことだった。
それを、寂しいように感じる人があるかもしれない。
だけどわたしにとっては、このうえなく素敵なことだった。
どこまでいっても知り切れないと感じさせてくれることが、いちばん素晴らしいことだった。