景色に溶けるとき
疲れた一日だった。
ずいぶん歩いた。動きまくった。
夕方、会社に帰ってふいに泣きそうになった。
身体が、もう少し大切にしてほしいと言ってるような気がした。
それくらい、今日は身体が疲れた。
動かないと不安なんだろう、正直。
そして、帰り。
バス停から家まで歩いた。
真っ暗な山道。
いつもはいくら住民でもさすがに何だかこわくって早足で帰るけど、そんな体力もなくて、ゆっくりと歩いた。
そして、いつもはあまり見ないようにしながら通り過ぎるものたちを、今日はじっくり見てみようと思った。
主が亡くなって、今は誰も住んでいない家。
真っ黒な森。遠くの木々。
ずっと奥のほうにある、ひっそりとした墓地。
初めてじっくり眺めてみた。
そうすると、それらは私に不思議な安らぎをくれた。
私を脅かすものではないんだ。誰も、何も、私を脅かしてはいない。
風、夜空、星、夜景。気持ちよさそうにそよそよゆらぐ木々。
ゆっくり歩いたり、深呼吸をしたり、静かにくるーっと回ったりすると、自分がその中に溶けていくような感じがした。
目の前のストレス。それを追い払うことは出来ない。
だからこそ、自分じゃないものと溶け合う時間を持つのがよさそうだ。
景色の中に溶ける時間。
もっと、いのちの根源を思い出せ。