宇宙くらい

人の身体には、さわったりなでたり、握ったり包んだり、叩いたり穴につっこんだりしても絶対にたどり着けない場所がある。
同じように、どれだけ時間をかけても丁寧に話を聴いても、怒ってもすねても笑かしてもどんなに気の利いた返しをしても、絶対に聴けない話がある。

その人の考えていること、感じていること、離れているときいま何をしているか、どうしたって知れないことのほうが多い。
知りきることは不可能。


私は、目の前にいるときに見れるもの、さわれるもの。その人の口から出てくる話、その人の目から伝わるものが好き。
けれど、惹かれているのはそこじゃない。と気づいた。


惹かれるのは惚れるのは、知れない部分、さわれない場所。
その人の、不思議さ。未知。
いつまでも未知。未知でありつづける中心。日常。
たぶんそこは一生かかっても一生手の届かないもので、一生知れないから一生私を惹きつける。


愛する人は、宇宙くらい不思議だ。