梅田のエスカレーター横で音楽を聴いていた人のこと
まだ大阪で働いていた頃のこと
いつも仕事帰りは遅く、心斎橋から御堂筋線で梅田。
混み混みで、人だらけで、頭の中は仕事のことやらなんやかやで、とにかく埋まっていて。
その閉塞感は、いま思えばぞっとするほど。
で、梅田。
マクドナルド前から阪急のホームにいくためのエスカレーターがある。
そのエスカレーターの横で、音楽を聴く人がいた。
耳にイヤホン差して、いつも真っ直ぐ前を向いていたその人。
人の流れや世の中の流れなど全く関係ないというように
むしろそれも音楽のひとつとして聴いていたのかもしれない
けれど、それはわたしにわかるはずもなく。
その人の佇まい。
その人からわたしが感じていたもの。
それを言葉にすることが全くもって、当時のわたしにも今のわたしにも出来なくて、
でもすごく印象的で、言葉にするほど安っぽくなるのが辛い。
腑に落としたいことを言葉に落とし込むことが全くできないというもどかしさ。
当時、この人の存在を話せるのはたったのひとり。
その人は、きっとこの感じをつかんでくれていたと思う。
とにかく、このエスカレーター横で真っ直ぐ前を見て音楽を聴いていた人に
わたしがある種の「救い」のようなものを感じていたのは間違いないのだけど。
いちばん掴みたいものは、いちばん淡く、曖昧で
だからぜんぜん言葉にならない。
言葉にしたくないのかもしれない。
あの人はまだ梅田にいるのかなとたまに思う。
意志もなく、いまも誰かを救っているのかもしれない。