離れることで近づいてゆく

東京で暮らし始めて一年

必要もないのに家を出たのは、母に近づきたいからなのだと
いま、はっきりそう思う。


台所に立つときはいつも
何度も何度も、母の再生を試みている。


あの味。
味だけでなく、口に入れたときの安心感。
満たされる感じ。


毎日食べているときには意識していなかったけれど、
離れてみると、思い返せばどれほど有難いものなのかがわかる。


それをわたしは自分の手と感覚で再生したい。


母の再生、それがきっとわたしの基本。