無音の世界

  (部屋の、ジーンという音が聞こえる)



子どもの頃、高熱を出して死にかけた


そのときに 無音の世界 にいったことがある



 音の無い、強烈な圧迫


真っ白くて、計り知れない大きさの

 女の人が立っていた




あらゆるものが 一瞬で遠ざかり、また一瞬で目の前に迫ってくる


世界の端が わからない



黒い世界に、灰色の犬が歩いていて、

そっとポールを避けていた



少しでも動くと死んじゃう


と知っていて、息も出来ずに

    その世界に 支配された


音がなかった


死んだ、と思った


  

  (私は痙攣を起こし、こっちに帰って来れたんです。)