記憶と自由

(ラフスケッチとして)


記憶すること、思い出すこと、をやめてみる。

何かを覚えておく、ということは、「しがみつく」ことに近い。

吹きすさぶ風の中で岩をがしっと掴むような。
濁流のようにごうごうと流れる時の中で、流されまいと岸につかまるような。


たとえば、過去の記憶を脳内に再現すること。
誰かを思い出すこと。
あるいは将来のこと、そんな輝かしいものじゃなくても、たとえば明日の予定や、約束について忘れないように努めること。

記憶する とは、しがみつく という行為に似ている。


このしがみつきを、ふっとやめてみる。
その妙な浮遊感

開放感


記憶の、しがみつきの手を緩めてみると、あっという間に訪れる、一瞬の自由。


妙な浮遊感が


記憶とは、生きるとは、約束を守るとは、

なんて曖昧なのだろう

しがみつきの力加減。の曖昧さ



「今」というのは、過去の記憶にも未来の約束にもしがみつかない、何もかもを忘れてしまえるときに

初めて訪れる 自由 のことでしょうか