死の淵で思い出すのはきっと一人で歩いた道のことだと思った



誰かと過ごした思い出以上に、一人で歩いた道のことをよく思い出す。


高校3年の秋、推薦で大学が決まり、何もすることがなくなってひたすら目的もなくただ歩いていたあの3ヶ月のこと。
一人で歩きながら一人で考えたこと。

東京の頃を思い出しても、やっぱり一人で歩いた時間のことがいちばん懐かしい。


そのときはたいして気にも留めていなかった湿度や空気の匂い、道に落ちてるゴミ、向こうから歩いてくる人、通り過ぎる車、自分の気持ち、をこねくりまわして捻りだした屁理屈のこと。
いろんな感情を、吐く息とともに土に還す。ひたすら自分を慰めた。もういまは、そんなことさえしない。




歩くリズムに、自分を乗せて歩く。


ただそれだけのことが、結局いちばん好きなのかもしれないと、ブルックリンを歩きながら思った。